さざなみの声


 次に目覚めた時には外は明るい陽射しに包まれていた。私はベッドの中でシュウに包まれたまま……。目を開けると同時にシュウがそっと唇にキスして

「おはよう。やっと起きた?」

「シュウ起きてたの?」

「う~ん、三十分くらい前かな。寝顔を見てた」

「起こしてくれればいいのに」

「寧々が眠ってる間に何回キスしたと思う?」

「えっ?」

「十回はしたかなぁ」

「私も今朝早くシュウにキスしたよ。知らないでしょう?」

「えっ? いつ?」

「まだ夜中かな? 外、真っ暗だったから。目が覚めてシャワーを浴びようと思ったの。そしたらシュウ可愛い顔して眠ってたからつい」

「一人だけでシャワー浴びたの? ずるい」

「どうしてずるいの? だってシュウ良く寝てたよ」

「そういう子には、もう一回一緒にシャワーを浴びるために……」

「ん? きゃっ、シュウ……ダメ」

 両腕を押さえられた。シュウの目が悪戯っ子のように光って唇と舌が、まるで生き物のように敏感な場所を動き回る。抑えようとしているのに声が勝手に零れてしまう。もう腕を離されているのに抵抗することも出来ない。

 私はシュウの腕の中に閉じ込められて、ただ甘い声を上げるだけ。頭の中でなのか私自身なのか白い雲の上を漂って心許ない。自分がどうなってしまうのか、もどかしくて、じれったくて……。シュウの動きが待ち遠しくて……どうにかなりそう……。

「シュウ……」

「寧々……」

 一つに溶け合って、そのまま意識が遠退いていく。シュウの体温だけしか解らなくなっていく。そしてそれすらも解らなくなって白い世界が細い糸のようになってスーッと消えて行った。

「ん……」

 目を開けると心配そうに覗き込むシュウ。

「寧々、大丈夫か?」

 髪を撫でてくれる手が心地好い。

「シュウ愛してる。私ね、幸せよ。すごく。シュウに愛されてるのが分かるから。とっても良く分かるから」

「寧々、ずっと愛してるから。何時だって愛してる」

 シュウの胸にギュッと抱きしめられて、もう私は言葉に出来ないくらい幸せだった。
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