さざなみの声
10
シュウ何故か嬉しそう。後片付けを二人でして、きょうの料理をノートに書き込んで。
「あぁシュウ、明日の朝ご飯食べたら中釜に、お水を張ってね。空のまま置いておくとガリガリになって、すぐ洗えないから。ちょうどシュウが食べるくらい残ってるよ。保温は切ったし茶碗に盛って電子レンジで温めた方が美味しいから」
「うん。分かった。ノートは書いてもらえた?」
「これくらい書いておけば分かるかな?」
「ありがとう。次は一人で作れるよ。これを見れば教えてもらった手順を思い出せるから。寧々、そういえば綺麗な字を書いたんだよな。読み易い」
「うん。私ね、昔から字だけは褒められるの。綺麗だって」
「寧々は綺麗だよ。初めて家の大学で会った時、一目惚れだった。どうやって話し掛けようかドキドキもんだったんだからな」
私の後ろに腰を降ろして、そっと抱きしめられた。
「寧々、結婚しようか」
「えっ?」
「このまま結婚したくなった。プロポーズするの二度目だよ」
「私、前の時だって断ったつもりないよ」
「分かってる。僕が子供だったんだ。結婚したら寧々は毎日美味しい料理を作って僕の帰りを待っていてくれるんだって思ってた。それが結婚だと勝手に決め付けてた。母さんは専業主婦だったから」
「ごめんね。私は専業主婦にはなれそうもない」
「分かってるよ。寧々はデザイナーの夢を叶えた。仕事は続けて欲しいと思ってるよ。出来る事は協力するから」
「シュウ、ありがとう」
「もっと広いマンションに引っ越そうかな。ここは狭過ぎる。そうしたら一緒に住まないか? 結婚の予行演習のつもりで」
「同棲するってこと?」
「家の会社、同棲はまずいんだよな。同期の海外事業部の奴が、そろそろ海外勤務になりそうだって言ってたけど、ちゃんと結婚して一緒に行くように上司に言われたらしい」
「そう。でもシュウは総務部だから関係ないよね」
「うん。来週マンション探しに行こうか?」
「いいよ」
シュウにキスされた。
「そろそろ送って行こうか?」
「そうね。明日は仕事だしね」
シュウの車で送ってもらった。いつもの場所に車を停めて
「土曜日の午後に迎えに来るから、またメール入れるよ」
「分かった。おやすみ」
「あぁ寧々お泊りセットちゃんと持って来るんだよ」
「お泊りセット? シュウそんな言葉知ってるんだ。意外」
「それくらい知ってるよ。変か?」
「ううん。ちょっとヤラシイって思っただけ」
「ヤラシイのは嫌い?」
シュウは笑ってる。
「シュウのヤラシイのは大好きだよ」
唇にチュッってされた。