さざなみの声
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約束の二時より少し前に姪御さんは現れた。お母さまとお二人で。まだ学生さんなのかと思えるくらい初々しい可愛らしいお嬢さん。お母さまは副社長の妹さん。やっぱりどこか似ていらっしゃる。
「担当させていただく石岡と申します。宜しくお願い致します」
「一昨年の六月に従兄妹の結婚式でお会いしました」
「あぁそうですね。麗子さんのご主人とは従兄妹になられるんですね」
「とても素敵なドレスを着ていらして良く覚えています。結婚が決まってドレスのことで伯母に相談したら、あなたが伯母の会社でデザイナーをされていると聞いて是非あなたに作っていただきたいと思いました」
「ありがとうございます」
「エスコートしていらした男性も、とても素敵な方でしたから良く覚えておりました」
「は? エスコート?」
えっ? 誰の事? シュウ?
何故か副社長が笑ってる。
ドレスのデザインは私に任せると言ってくださったので出来上がっていた七点のデザイン画を見てもらうことにした。
「どれもとっても素敵です。ねぇ、お母さん」
「本当に綺麗な花嫁になれそうね。あなたでも……」
「まぁ、酷い」
笑っているのも絵になる素敵な母と娘。
「私、これが気に入りました。おばさま、これ私に似合うと思います?」
「ミカちゃん、さすが私の姪っ子だけあるわね。私もさっき見せてもらってミカちゃんには、これが一番似合いそうだと思っていたところよ」
「じゃあ、これで作っていただけますか? お母さんいいでしょう?」
「着るのはミカなんだから、あなたの気に入ったものが一番なんだと思うわよ」
「お式は十月だったわよね。まだ期間も充分あるから思い通りの素敵なドレスが出来るわよ。寧々さん宜しくね」
「はい。では採寸させていただいて宜しいでしょうか?」
ミカさんのサイズを測らせていただいた。
「お疲れさまでした」
「これからミカちゃんのサイズで型紙を起こすから、しばらく時間は掛かるけど仮縫いまで楽しみにしててね。手作業も随分あるから、とっても時間の掛かるものなのよ」
「はい。楽しみに待ってます。宜しくお願いします」
「ご期待に添えるよう素敵な物を作らせていただきますね」
結婚の準備など買い物もあるからとミカさんとお母さまは帰られた。