さざなみの声
4
あの頃。二十三歳の私は啓祐を愛していた。それは紛れもない事実。幸せなことより辛いことの方が多かったけれど、それでも私の気持ちに嘘は無かった。今も後悔はしてない。どうしたんだろう。もう思い出すこともなかったのに。気持ちの整理も出来てるのに。
マリッジブルー? シュウとの結婚に迷いはないのに何故だろう。
眠ってるシュウの顔を見た。ずっと一緒だよね。シュウと一緒に居ると笑顔になれる。幸せだと感じられる。
「う~ん……」
シュウが目を覚ました。
「大丈夫? 寒くない?」
「いつの間に寝ちゃったんだろう」
「気持ち良さそうに眠ってたわよ」
「そうか? あぁ毛布、ありがとう」
「お水持って来ようか?」
と立ち上がったら
「はい。お水」
母が持って来てくれていた。
「ありがとうございます」
お水を飲み干してシュウが言った。
「あぁ、美味い」
と満足そう。
「飲み過ぎた? ずいぶんとお酒、進んでたみたいだけど」
「お父さんが勧め上手なんだよ。料理もとても美味しかったし」
「そう言ってもらえると嬉しいけどね。ねぇお母さん」
と言うと母は笑顔だった。
「ここからの眺めも最高ですね。お庭、素敵です」
「散歩してみる? あぁでも寒いかな。お酒、醒める時って寒いでしょう? 風邪ひいたりしたら大変だから」
「大丈夫だよ。庭、散歩したいな。ちゃんとコート着てれば平気だよ」
「じゃあ、行く?」