黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「ねぇ、シュリ。この国の名前は何て言うの?」
「マカライト国。孔雀石の国だ。」
「マカライト国………。」
水音がいた世界でも存在したマカライト。鉱石で、綺麗な緑色と、白、そして黒色の縞模様が特徴的だったと記憶していた。元の世界では、アクセサリーや小物として加工されて使われていた。
確かに、この世界の階級はすべて名前に色がついており、緑色の部分が多く、白と黒は少ない。その色すべてが入っている鉱石の名前をつけるのは、ピッタリだと思った。
「そして、最も重要なのは、おまえの存在だ。」
シュリは真っ黒な瞳をまっすぐと水音に向けた。
彼が1番伝えたい事なのだろう、真剣な表情と、緊張感で、水音は体に力が入った。
「刻印を持たない者を、無色と呼んでいる。ここの世界ではない異国の者だと言われ、おまえがいた湖から現れると言い伝えられているんだ。そのペースは約50年。けれど、おまえは前の無色が来てからかなりの短期間で来ている。」
シュリは、ゆっくりした口調で、丁寧に話をしてくれた。こちらの暦は水音の世界と一緒だった。
月の始めの1日。いつかはわからないが、無色が湖から現れているそうだ。そして、それはすべてが女性だったという。
そのため1日になると、白蓮の使いである青草の騎士「白騎士」と呼ばれる集団が、1日中湖を監視しているという。
昨晩、水音が一瞬だけ見た白の甲冑を身に付けた集団。それは、白蓮の手下である白騎士だったのだ。
水音が湖に落ちたのは1日の日付が変わる少し前だったのだろう。約50年のペースで無色が現れると思っていた白騎士達は、日付と同時に湖を去っていったのだろう。
シュリは「俺は勘が働いて、少し待ってみたら………おまえが湖から現れたんだ。」と、ニヤリ笑い嬉しそうに話してくれた。