黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「どうして私を捕まえるために、白騎士という武器を持った人たちが来るの?女の人なら、すぐに捕まえられるのに………。」
「おまえな、少し考えろよ………。俺はどうしてあそこにいたんだ?」
「あっ!……狙っていたのは、白騎士だけじゃないんだ!」
シュリにヒントを貰い、水音が答えを出すとシュリは深く頷いた。水音の憶測は当たっていたようで、ほっとした気持ちになる。けれども、それも一瞬の事。
知らない所で、自分が狙われていると改めてわかると、恐怖からか寒気を感じてしまう。
快く歓迎して欲しいが、そんな風には出来ない事情があるらしい。
では、どうしてそこまで白騎士やシュリが必死なって、無色である水音を追うのか。その理由は、きっととても重要であり、約50年間、水音を今か今かと待ちわびていたのだろう。
シュリだけではない、他の黒や青草の刻印の人々も。
「シュリ、教えて。無色の私には何が出来るの?どんな力があるの?」
本当は答えを聞くのが怖かった。
ただ、湖に落ちただけなのに、それで異世界に飛ばされて、何か重大な使命を背負わされるんじゃないか。異世界へと飛ばされるという、元の世界ではありふれた物語。いざ、自分がその立場になると、恐怖心しか感じられなかった。
それがわかっていたのか、シュリは1度躊躇う素振りを見せた。口を開いては、また閉じてしまう。
けれども、水音は震えてしまいそうな手をギュッと握りしめるのを、シュリはじっとり見つめていた。
すると、彼は片手を伸ばして、震える水音の手にシュリの手を重ねた。
突然の行動に驚きながらも、彼の手からは温かい体温と「大丈夫だ。」という安心感が、じんわりと伝わってきたのを、水音は感じた。
すると、震えていたのが嘘のように、落ち着きを取り戻していた。
シュリもそれがわかったの、ゆっくりと口を開いた。
「無色は、階級を変える事が出来るんだ。……俺がおまえを拐ったのは、白蓮と黒の階級を変えて欲しいからだ。」
彼の顔はとても真剣で鋭いものだったのに、瞳だけは揺れていて。とても寂しそうに見えた。
自分が追われる理由が、とても大きすぎるはずなのに、水音はシュリの悲しむ理由が気になり、そして、知りたかった。