黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛



 元の世界では、独りで過ごすことが多かった。
 仕事中は誰かと接しなければいけないけれど、自分からはなかなか声を掛けられなかったし、一人でいたいと思うことも多かった。そんな、大人しい性格のせいで友達も少なく、家族もいない水音は、家に帰っても一人だった。

 一人の方が楽だ。
 友達や彼氏がいたら、何を言われるのか、そして嫌な思いをさせて嫌われないか。そんなことばかり考えてしまうのはわかっていたので、一人が好きだった。


 けれども、街中で友達や家族、そして恋人同士と仲良く楽しい時間を過ごしている人々を見ると、羨ましくなり、そして、自分が恥ずかしく、惨めになってしまうのだ。
 一人で生きたい。そんなのは強がりだったとわかっている。
 けれども、行動出来なかった………。


 それなのに、マラカイト国に来てから約半日。
 シュリと過ごしていたのは短い時間なのに、寂しいと思ってしまうのだ。それが、見知らぬ国だからなのか、それはわからない。

 けれども、シュリには早く帰ってきて欲しい。そう、強く思うのは本心だった。


 味のしないスープと、パンを夕食に食べ、体を拭きたかったので、水とタオルを借りて、火の石の前で体を拭いた。
 部屋には、ロウソクが沢山置いてあり、火の石を使って、部屋を明るくした。
 けれども、部屋でやることもなく、掃除を軽くしてから、床のクッションの上に横になった。

 すると、疲れていたのだろうか。
 すぐにウトウトして、水音は眠りに落ちてしまった。




 一人は怖かったのか、浅い眠りだった。
 そのため、物音がして玄関のドアが開いたのに、水音はすぐに気づいた。
 シャラシャラとあの音がしたので、「シュリが帰ってきた。」と目を開けなくてもすぐにわかった。


< 19 / 113 >

この作品をシェア

pagetop