黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛



 火の貴石が頑張っているうちに、フライパンのような平らな鍋に、油をひいて温まってきたら切った肉を乗せて、じっくりと焼いた。大きい肉なので、時間がかかる。その間に、底が深い鍋に水を入れて野菜を切ってスープを作ることにした。
 出汁の魚を入れて、野菜を切ったり、お肉をひっくり返して味をつけたり忙しく動き回ってきた。

 料理をしていると集中力が高まるというが、水音はその通りだと思っていた。料理をしている時は、余計なことも忘れられる。
 この異世界の事も、そして、無色という役割の事も。


 「おまえ、何やってんだ………この匂いはっ!」


 目を覚ましたシュリが、いつの間にかキッチンにいた。水音の、背中からひょいと顔を出して、焼いている肉の匂いを嗅いでいた。
 キラキラのした目で、おもちゃのショーケース前にいる子どものようだった。


 「せっかくのお肉だから、おいしいうちに食べたいかなって思って。作ってたんだけど……。」
 「肉だな!しかも、店みたいなうまそうや匂いがする。」
 「そうかな?もう少しで焼けるから、待っててね。」

 
 スキップでも、しそうなぐらいの上機嫌でシュリは今まで見たことがなかった。
 シュリはお肉が好きなのかなーと思って、水音も嬉しくなってしまった。
 お腹を空かせているシュリのために、料理をする手に力が入った。



 「うまい!!おまえ、料理できんだな!店と同じ味がする。」
 「お口に合ったようで、よかった。」
 「おまえがいてくれたら、ずっと美味しい飯が食えるな。」

 
 ガツガツと食べながら、そういうシュリの言葉に水音はドキリとしてしまった。
 それは、どういう意味で言っているのだろうか…………?シュリの事だからおいしい食事を作ってくれる居候がいてくれてよかった、という意味だとおもうが……….。

 でも、もしかしたら恋人同士になる前の「一緒にいたい」アピールなのだろうか?と、深読みをしまう。
 恋愛経験がほとんどない、水音にとって男の人の気持ちは、まだ理解出来ないものだった。


< 22 / 113 >

この作品をシェア

pagetop