黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛



 シュリは体全体で呼吸をするように、とても辛そうだった。
 こんな体になってしまうような仕事、服には大量の血液が着いている。もう乾きかけのもある。
 これは、全部がシュリの血ではない。水音は、そう思った。


 「………シュリを嫌いになんてならないよ。だから、安心して。話はまた後よ。とりあえず、ベットで横になりましょう。立てる?」


 水音は、フラフラと立ち上がったシュリの肩を担いで、彼をベットまで運んだ。
 彼の血がベッタリと肌や洋服につくが、そんな事は気にしなかった。むしろ、血液の量を見て、彼の容態がとても心配になってしまう。

 このままだと、彼の血液が足りなくなって、シュリは危ないと思った。医療の知識はないものの、彼の真っ青で苦しげな顔を見てそう考えたのだ。
 彼を助けたい、と。


 「シュリ……。少しだけ待ってて……。」
 「……ど、した?」


 息も絶え絶えになりながら、シュリは水音を見つめた。


 「お医者様を呼んでくるから待っててっ!」
 「……え、おまえ……行くなっ。」


 シュリの言葉も聞かずに、水音は部屋にあった厚手の布を羽織って、シュリの部屋を飛び出した。



 「……行くなっ!水音っ!!」



 水音は、自分を呼ぶシュリの声を聞いて、「初めて名前を呼んでくれた。」と、心の中で感動していた。

 彼の元に戻って、彼の傍にいたい。
 自分がいない間に何かがあったらどうしよう、と不安になる。

 けれども、自分では助けられないと水音にはわかっていた。

 だから、シュリの手を離して飛び出したのだ。


 彼を助けるために、水音は初めて夜のマカライト国の街を一人走った。
 
 

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