黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
水音は、甲冑の音がする方へと急いだ。
白騎士たちが向かっている先は、シュリの家とは逆の方向だったので、水音は少しだけ安心した。彼らはまだ、シュリの家を見つけてはいないようだった。
しばらく走った後、どこかの家の前で白騎士たちが集まっている。そこがシュリの家だと勘違いしているようだった。
「銀色の髪の男がいるだろ!?早く出せ。」
「そんな男はいません……。ここには僕と妹だけです。」
「ここに入っていくのを見たという証言があるのだ。お前ら、嘘をついているな!」
白騎士の一人が罵声を浴びせているのは、小学生ぐらいの男の子と女の子だった。
ガリガリに痩せており、着ているものも薄汚れ、所々が破れている。こんなにも寒いのに薄いTシャツのみだった。
こんなにも弱っている子どもに対しても、白騎士は容赦がなかった。
嘘をついていると言い張っているのだ。
「本当にいないんですっ!」
そう言うと、二人はシクシクと泣き出してしまった。するの、白騎士はチッと舌打ちをして、「餓鬼はすぐ泣くから嫌いなんだよ!」と、言って二人の事を蹴飛ばし、腰にあった剣を抜いて、子どもたちに向けた。
「白騎士に逆らった罰だ。」
そう言って、抜いた剣を大きく掲げたのだ。
水音は、その瞬間震えていた体が止まった。
先ほどまで、白騎士の姿を見て、自分がシュリを助けてると決めた心が揺らぎかけていた。
大きな白い甲冑に、強い言葉、剣や弓の武器を持った男達が目の前にいるのだ。
水音は恐ろしくて仕方なく、子どもが困っているのに、足がすくんで動けなかった。
けれども、白騎士が剣を抜いて子ども達が斬られてしまう、そう思った瞬間。先ほど血まみれで倒れていたシュリの姿を思い出したのだ。
ここで子ども達を助けられなければ、シュリだって助けられない。子ども達が犠牲になったとしても、シュリはいずれ見つけられてしまうだろう。
そして何より、子ども達が殺されてしまいそうなのだ。「そんなこと、許さない……。」と、水音は小声で自分にいい気かけるようにつぶやくと、颯爽と隠れていた場所から、大きな道に走って出ていった。
「無色の君は、ここにいるわっっ!」
水音は、震える体を必死に堪え、大きな声で白騎士に向かって叫んだのだった。