黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
片方の腕を高くまで上げられ、水音は吊られるように立ち上がる。
湯から出た体は、もちろん何も身につけていない、裸のままだった。
空いている片手で胸等を隠そうとするが、それも上手く出来るはずがなかった。
エニシは、会ったときと同じニコニコした顔で、水音の全身をジロジロと見た。
「透き通るぐらい白い肌だね。とっても綺麗だよ。それに、やはり本当にあの汚い刻印が無いんだね。」
「……見ないでください。」
恥ずかしさから彼の視線から逃げるように、水音は反対側を向いて視線をエニシから逸らした。
「僕は、君の願いを叶えてあげたよ。」
「え………。シュリは無事なの!?ケガは大丈夫です?」
「……あぁ。僕の屋敷で手当てをしてもらったよ。もちろん、内密にね。白蓮の家に黒が入るのは、あまりよく思われないからね。」
「よかった………シュリは無事なんですね。」
「でも、彼、朝になったらいなくなっててね。逃げてしまったみたいだ。」
「そう、ですか………。」
エニシの言葉は聞いて、水音は少しだけホッとした。
ずっと気がかりで心配だった事だ。シュリのケガは深かったはずだ。それを黒の刻印である黒が手当てをしてもらえたのは、かなりの幸運だったかもしれない。
「エニシさん。本当にありがとうございます。本日……。」
「お礼はいらないよ。だから………。」
そのまで言うと、水音の腕を更に上に持ち上げて、エニシの顔が近づくぐらいに体を寄せられた。目の前には、彼の顔があった。その顔には、先程までの笑顔はなく、凍りついた冷たい表情に変わっていた。
「変わり僕の願いを叶えてくれないかな。」
「え………エニシさん……。」
水音は、恐怖を感じながらエニシの顔を見つめた。見たくはなかったけれど、彼がギリギリと強く腕を握りしめてきており、反抗したらどうなってしまうのか。想像すると怖くなってしまったのだ……。