黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
いつも拒否する水音の返事を期待して、冗談で言ったのだろう。しかし、水音の答えは違っておりレイトは驚いた顔を見せていた。
「あの?レイトさん?」
「あぁ……。」
水音が、レイトにピッタリとくっつくと、レイトは少しおどおどとした様子で手をまわして、抱き締めてくれた。
慣れていない様子に、水音はマナが言っていた「レイト様は女の人を連れてきたり、お付き合いしていると聞いたことがない」という言葉を思い出した。あれは、本当なのかもしれないと、水音は思った。
優しくて、かっこよくて、そして白蓮の刻印持ちで、白騎士。モテない理由はないし、こうやっ2人で歩いていると、女の人の視線が集まる。それぐらい人気があるのに何故特定の恋人を作らないのか。
水音は、それが不思議で仕方がなかった。
そして、抱き締められながら気づいたことをレイトに伝える。
「レイトさんの刻印は、ここにあるのですか?」
「…………あぁ、そうだよ。何故わかったのかな?」
水音は、左の脇をゆっくりと指で触れると、レイトはビクッと体を震わせた。
「なぜか、ここがとても温かいのです。だから、そう思いました。」
「………それは、君だから刻印に反応しているのかもしれませんね。」
「そうかもしれません。そういえば、私、白蓮の刻印を見たことがありませんでした。きっと、綺麗なんでしょうね。」
水音は、白蓮の花を思い出しながら、そう言う。きっと、綺麗な花が白い刻印で描かれているのだろうと。
「えぇ……とても綺麗だと思いますよ。」
そう呟くように言ったレイトの顔は、何故か泣きそうで、どうして白蓮の刻印が悲しむのか、その時の水音にはまだわからなかった。