黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
思い立ったらすぐに行動に移す水音は、その日の夜、白騎士の見回りの仕事が終わった後に、レイトに会って話そうと思っていた。
部屋でレイトから貰った本を読んでいると、マナが部屋を訪ねてきた。
「水音様、失礼致します。」
「マナ、どうぞ。あ、もしかして、レイトさんが帰ってきたの?」
「はい……ですが、今は行かない方がよろしいかと。」
「急ぎの用件なの。すぐに行くわ!」
「あっ……水音様……!」
マナが止めるのも聞かずに、水音は隣のレイトの部屋へと走った。
すると、廊下にポツポツと血の後が付いているのに気がついた。廊下の奥から、レイトの部屋まで続いていた。
「これは……レイトさん……!?」
水音は、全身の血の気が引くのを感じた。
レイトが怪我をしたのではないかと思うと、シュリが血まみれになって倒れた姿が頭をよぎった。
「……っ!!」
ロックもしないで、レイトの部屋に入る。
すると、部屋の真ん中で佇む彼の姿が、水音の目に飛び込んできた。
灯りを1つしかつけていないのか、薄暗い部屋の中を、レイトはただ立っていた。白騎士の甲冑は脱いでいたが、白いシャツと白のズボンはそのままになっていた。そして、顔や服、そして手には沢山の血がついていた。
「レイトさん!」
水音が名前を呼び、彼に近づくと、レイトはゆっくりと水音の方を向いた。顔は無表情で、どこかぼんやりとしていた。
「水音…そんなに慌ててどうしたんだ?」
「どうしたって……レイト、その血、怪我をしてるんじゃないの?」
水音は彼に近寄って、体をじっくりと見る。暗くてよく見えないけれど、水音はすぐにわかってしまった。
これは、全て彼の血ではないと。