黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「やめてください。私、刻印なんていらないです!」
「黒の刻印だけど、すぐに白蓮に変わるんだ。そんなに不安にならなくていいんだよ。」
「白蓮の刻印が嫌なんですっ!」
水音がそう叫ぶと、レイトは目を大きくして驚いた顔をしていた。そして、信じられないものを見るような、そんな表情だった。
「君は、どうしてそこまで白蓮を嫌がるんだ?」
「……あれは、人の犠牲で成り立っている生活です。あんなのは、幸せとはいいません。ただの独裁です。」
「…………君は、わかっていない。」
「え?」
「君は、わかっていないんだ。黒がどれだけ苦しくて惨めで、酷い生活かを。だから、そんな事が言えるだ。」
悔しさと怒りを噛み締めるようにそう言うと、レイトはまた、水音にキスをした。
その時、口の中に違和感を感じた。固形の何かを口の中に入れられた、と思った時にはレイトの口が塞がれてしまった。吐き出したいのに、薬を舌で押されてしまう。無理矢理、喉まで入れられるかのように薬を飲み込み、水音は唇を離された瞬間、咳き込んだ。
それでも、薬が出てくることはなかった。
「何をしたんですかっ!?」
「君はきっと逃げようとするからね……。ゆっくりお人形になっていく薬だよ。大丈夫、2日で効果切れていくから、それまでに全て終わらせるよ。もう、彼には頼ってられない。」
「………そんな。」
「大丈夫だよ。痛いことはいないから。」
「……………彼って誰の事ですか?」
「君は知らなくいい事だよ。」
レイトは水音に薬を飲ませ、そして、全てを終わらせようとしているのだ。
恋人同士の繋がりと、刻印の交換を。それに抵抗したいのに、少しずつ体が重くなっていくのを感じられる。まだ、体は動かせるものの、先程よりも怠さが大きく、水音はベットに身を任せたまま、キッとレイトを睨んだ。
「レイトさん……レイトさんの事、私は信じてます。本当はそんな事をする人ではないって。」
「……君はお人好しなのかな?こんな風に無理矢理押し倒されたり、こんな血塗れの僕を見てそんな事を思うなんて。」
「レイトさんは確かに悪いことをしているかもしれません。でも、理由があるんですよね?」
「………それは……。」
水音の説得に、レイトは少しだけ動揺してしまっていた。まさか、こんなことをされてまで自分を信じるとは思ってもいなかったのだろう。
水音は、それを感じ取り「やはり、この人は信じられる。」そんな風に思った。