黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛


 その時だった。
 ガシャンッと、レイトの部屋の窓が割れて、黒いものが飛び込んできた。そして、それはすぐに動き出して、レイトに飛びかかっていた。


 「………シュリっっ!」


 水音はその人影が誰かがすぐにわかり、思わず叫んでしまう。シュリの手には、いつかのボロボロの短剣があった。レイトも、太股に隠していた短剣をすぐに抜いて、シュリの攻撃を受けた。


 「白騎士の警備はどうなってるんだ……!」
 「あんな連中、俺一人で退治出来るってわかってんだろう?」
 「っっ!!」


 シュリは短剣を使い素早く攻撃を仕掛ける。しかし、レイトはそれをすべてわかっているかの様にかわし、そしてその間にシュリへと斬りかかる。


 「相変わらず、いやらしい攻撃だなっ!」
 「奇襲を仕掛けるおまえには負けるよっ!」
 「水音に何をしたっ!?」
 「……今からするところだったんだよ。まぁ、お人形になる準備は整ったよ。」
 「っっ!このっ!」


 シュリは、レイトの体を思い切り蹴飛ばした。けれど、シュリの攻撃はかすっただけだったが、一瞬彼の動きを止めた。


 「水音っ!」


 シュリはその隙に水音に駆け寄った。そして、体を起こして彼を抱き締めた。

 
 「大丈夫か?何かされてないか……?」
 「シュリ……ありがとう、来てくれて。今は体が重くて動けないの。……ごめんなさい。」
 「わかった。俺にしがみついてろ。」


 シュリは水音を抱き上げた。水音は彼にしがみつく力も出なかったが、必死に力を振り絞って、彼の肩をぎゅと手で掴んだ。それを感じて安心したのか、シュリは水音を見つめて少しだけ微笑んだ。
 けれど、その表情はすぐに真剣なものへと変わった。

 水音は、久しぶりに見る彼をしっかり見えていたかった。けれど、目の前には怒りを露にしているレイトがいた。彼が来てくれた事を喜びたいけれど、それは後になってしまいそうだった。

 それに、水音は少しずつ頭が朦朧として考えられなくなってきていたのだ。


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