黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「水音を返して貰おうか。」
「俺がそれを聞くとでも?」
「では、僕が間違って彼女を斬ってしまわないように、守ってあげるんだなっ!」
「……。」
レイトは声を上げながら、突っ込んでくる。
シュリは、咄嗟に枕をレイトに投げた。それをレイトはすぐに避けてシュリに向かってきた。
「君の攻撃パターンらわかってるんだよ!」
「……それは、俺も同じだっ!」
シュリは、レイトの動きを予知していたのか、彼の左脇、ちょうど黒の刻印があるところに短剣を思い切り投げつけた。
短剣は、レイトの脇腹をざっくりと斬り、そのまま床に落ちた。
「………っ、その剣を投げるなんて……。」
「水音を助けるためなら、その剣なんて惜しくないさ。それに、おまえが水音を傷つけるはずかないってことも、わかっている。」
レイトは痛みに耐えながら立ち上がろうとするが、沢山の血を流してその場に倒れ込んでしまった。
「レイト……レイト?」
「水音?」
「レイトが怪我をしてるわ、ダメ、助けないとっ!」
水音は、朦朧とする頭でレイトが倒れる姿を見てそう思った。
彼は、きっと間違ってしまっただけだ。きっと、話せばわかるはずなのだ。
同じ国で生きる人同士が傷つけ合うなんて、それを見てられなかった。水音を助けてくれた2人が傷つけ合うのは、嫌だったのだ。
彼の傷は、少し前のシュリほどのものではなかったかもしれない。けれども、大量の血が流れている。そして、彼は苦痛に歪んだ顔になりながらも、水音に手を伸ばして「水音……。」と、呼んでいた。
レイトの綺麗な顔や髪、そして刻印が赤に染まっていく。
「シュリ、離してっ!私、レイトを助けたいっ!」
「おまえ、何言ってんだ!お前を傷つけた奴だぞ!」
「それでもいや、私は彼を信じるって決めたの。私が信じないと、彼が……。」
シュリに抱かれ、動かない手を必死に伸ばして、レイトを見つめた。
けれども、薬のせいなのか。水音の思考と体はパタリと動かなくなってしまった。