黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
シュリは、水音が頷くと、水音の頭をゆっくりと撫でながら「わかった。」と言ってくれた。
寝る前に、温かいお湯で絞った布で、水音の体を拭いてくれた。血に染まった水音の体は、すぐ布を真っ赤に染めた。その度にシュリは布をしっかりと洗いまた、拭いてくれるのだ。
恥ずかしさもあったけれど、彼の優しい行動が温かくて、そしてくすぐったい気持ちになった。
洋服も新しいものに変えてもらった。ドレスよりも、シュリの服の方が水音は何倍も好きだと思った。彼の匂いが水音を包んで、安心させてくれるのだ。
そして、今日はそれだけではない。
隣からは彼の熱を感じられる夜なのだ。
狭いベットにふたりで入り、体を寄せあって横になる。じんわりとシュリの体温が伝わってくる。
怖いことがあり、体は動かなくなり、自分がこれからどうすれば良いのかわからず迷う。そんな、不安な夜のはずなのに、水音は幸せだと思ってしまう。レイトの怪我も心配なはずなのに、シュリの側に近づきたいと思ってしまうのだ。
不謹慎だな、と自分でもわかっているけれど、水音はシュリの優しさを今はずっと感じていたかった。
「水音………。」薄暗い部屋の中で、シュリが独り言のように水音を呼んだ。
「このベットをおまえに使わせたくなかったのは、きっと、ここは俺が傷つけた奴らの血がたくさついている場所に思えるんだ。もちろん、血がついたまま寝てるんじゃない。しっかりと洗っても、体に染み付いた血の匂いがきっとここに溜まってる。その血の匂いを感じては、悪夢を見る。だから、ここに、寝せたくなかった。」
「………。」
「お前を汚したくなかったし、それに、俺は………。」
シュリは、ぎゅっと水音の手を握ったまま次の言葉を言えずに止まってしまった。
シュリの手を握り返せない水音は、自分の頼りない体が憎かった。それでも、必死に指をかろうじて動かす。すると、シュリはその指をしっかりと手で包み込んだ。
「俺は、お前に嫌われたくなかったんだ。でも、今はこうやって傍に居て欲しい気持ちが強いんだ。……だから、こんなところで寝せて、ごめん。今のうちに謝っておく。」
「ぅ………ぅー。」
「……水音の香りと、あったかい体が近くにあると安心して、今日は悪い夢を見ない気がする。」
そう言うと、シュリは水音の髪をゆっくりと丁寧に手ですいてから、額にキスを落とした。「ありがとう。」そんな消えてしまいそうな小さな声が、聞こえてきたのは、きっと気のせいではないはずだ。
「何かあったらすぐ呼べよ。助けてやるからな。」
そんな優しいシュリの言葉を聞くと、水音はゆっくりと目を閉じた。
シュリの手は、水音の手をずっと握り続けていた。