黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「どうしたの?」
「……別になんでもない。」
「………シュリも寂しかったんでしょ?」
「おっ、おまえっっ!そんな事まで覚えたのかよ!」
「うん、嬉しかったから。」
水音の久しぶりの言葉と、素直な気持ちを聞いて、シュリは片手で顔を覆って隠しながら照れてしまった。けれども、ハタと止まって、指の隙間から水音を見た。不思議に思いながら彼と視線を合わせる。
「キスさせろ。」
「え……っっ!」
照れていたはずの彼だったけれど、やはり強きなシュリのままで、返事を待たずに水音に食らいつくように唇を合わせた。
久しぶりの感触を味わうようにシュリはキスを繰り返していった。
ゆっくりと唇を離すと、額をくっつけながら、水音を見つめる。サラサラとした銀色の髪が水音の肌に当たり、少しくすぐったいけれど、水音はシュリの真っ黒の瞳から目が離せなかった。
吸い込まれそうで、それでいて黒の宝石のように輝く瞳は、近くで見るほど綺麗だった。
「なぁ、水音?」
「………シュリ?」
「俺の事、好きになった?」
褐色の肌がほんのり赤く染まっている。
シュリが恥ずかしそうにしながらも、真剣な口調とまっすぐな視線で、彼が本気でそう言っているのがわかった。
シュリに告白されてから、水音はレイトの元へと連れられてしまっていた。返事をすることも出来ず、この部屋に帰ってきても、声を出せなかった。
シュリを大分待たせてしまった、と水音は申し訳ない気持ちになってしまう。
けれども、この離れた時間こそが彼の事を十分に考え、水音の気持ちを明確にしたように思えていた。
「………好きになった、よ?」
「………本当か?」
「うん。離れてるとき、シュリの怪我は大丈夫かな?とか、シュリは今何をしてるかな、とか……いろいろ考えたの。この世界に来てから、わからないことだらけで、迷うことがたくさんあった。けど、シュリの事を考えると、なんか心が温かくなるの。」
「………レイトから、俺が殺し屋だって事、聞いたんだろ?それでも、か?」
「うん………。殺し屋だった、になって欲しいとは思ってるよ。」
「そう、か。」
シュリは、水音の言葉を聞いてほっとしたのか、はぁーーと大きくため息をついた。そして、水音をぎゅっと強く抱き締めた。
「全部話してから、告白の返事を聞こうと思ってたんだ。それなのに、話した後だと断られると思った。……なんか、おまえに対して俺は臆病になるな。」
「……私の事、信じて欲しいな。シュリの事、ちゃんと好きになったよ。」
彼の弱音を包むように、水音はシュリの背中を抱き締め返した。すると、強ばっていたシュリの体から力が抜け、そして、水音の肩に頭をポンっと置いた。
「俺も好きだから。それに、信頼もしてる。」
そんな小さな彼の声を聞いて、水音は頬が緩んでしまうぐらいに幸せを感じてしまった。