黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
18話「甘い焼き菓子の思い出」
18話「甘い焼き菓子の思い出」
「な、何でシュリに白蓮の刻印が……2つの刻印……?」
混乱する水音を、シュリは苦笑しながら見つめ、そして優しく説明してくれた。
「黒の刻印の方は、刺青だよ。黒のスラム街でこっそりやってもらったんだ。白蓮の刺青する奴らがいたらしく、昔から刺青は禁止になってるから、こっそりやってもらったんだ。まぁ、店の人には黒の刻印いれるなんて、変わってる奴だって呆れられたけどな。」
シュリは、胸に馴染んでいる黒の刻印を自分の手で撫でながらそう言った。水音は、シュリが黒の刻印を見る目が悲しみではなく、嬉しさを含んでいた事に疑問を感じてしまった。
シュリは白蓮を嫌っているのはわかっていた。けれど、この世界に生きて、何故そんな気持ちになるのか、わからなかった。
「シュリは、どうして白蓮の刻印を嫌うの?」
「………俺の母親は、黒の刻印だった。で、父親は白蓮の刻印で、まぁ、愛人関係だったみたいで、それで出来たのが俺だ。もちろん、愛人の子どもを白蓮の家に連れてくるわけにもいかないし、母親も父親似の俺を手放すつもりはなかったのか、俺は黒のスラムで生きることになった。昔は、白の世界に憧れた。でも、俺はある人に出会って考え方が変わったんだ。」
「ある人………?」
シュリは、水音を見て懐かしむように微笑んだ。
「鳳雪香。」
その名前を聞いた瞬間。水音は、驚きそして、目の中に涙が溜まる。
それは、自分を愛してくれて、大切にしてくれた人で、水音に湖で願うことを教えてくれた人。そして、いつの日か自分の前から消えていってしまった人の名前だった。