黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
★☆★
シュリと、レイトの稽古場所は、青草の街の外れにある湖だった。
シュリがどこかから拾ってきた自分達より大きい木刀で打ち合いをしていた。
シュリは、レイトの癖をよんで攻め込むが、うごきが豪快なため、すぐにレイトに避けられてしまう。レイトは、勝機を待って「ここだ!」という時まで我慢するタイプだった。
正反対な性格でもあり、そして刻印も違った。
レイトに自分が白蓮の刻印だと打ち明けた時は、シュリはとても驚き、ショックを受けていた。
一時は、口も聞いてくれなくなり、それは長い期間続いた。けれども、シュリがレイトから離れなかった。
すると、ある日の夜。その時、根城にしていた廃墟でレイトが「シュリは何で黒のスラムにいるんだよ。」と話しをかけてきた。
「レイトがいるから。」
「なんだよ!俺のせいかよっ!だったら、さっさと綺麗なお城でも住んでろよ!」
レイトは温厚な性格で、シュリに対して怒ることはほとんどなかった。どちらかというと、シュリの後を追いかけてついてくるタイプだった。
そんな彼が、声を荒げて怒っている。それぐらいに、シュリの刻印が羨ましく、そして妬ましかったのかもしれない。
「俺は、白蓮が好きじゃない。」
シュリがそう呟くと、レイトは信じられないと驚いた顔でシュリを見た。
何でかはわからない。苦しくない生活。飢えた生活も、汚い服も着なくてもいい。それはわかっていたけれど、自分があの白蓮の城に住むのが想像できなかった。
誰かが苦しんで出来た安泰の日々。それをわかっていて、笑ってられるのだろうか。
だけれど、今の生活だって、誰か傷つけたり、騙したり、悲しませないと、食べていけない世界。
どこにいても、同じなのかもしれない。
そうはわかっていても、シュリは何かこの世界の決まりに納得出来なかった。