黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「私の子どももね、あなた達と同じぐらいなの。女の子なんだけどね、とっても可愛いのよー!でも、男の子も元気があっていいわね。あら、もう夕方なのね、帰らないと!」
一人で一通り喋った後、シュリに大きな袋を押し付け「これ、あげるわね。また、明日会いましょう!」と、ブンブンと大きく手を振って帰ってしまった。
「なんだったんだ。」
「さぁ………。シュリ、それどうするの?捨てちゃうの?」
「………。」
持っている大きな袋から、甘くて美味しそうな香りがして、二人を誘惑してきた。シュリは、ごくりと唾を飲み込んだ。
「食べるか。」
「ええ!?食べるの?」
「なんだよ、レイトはあの女が毒とか入れるように見えたか?」
「見えなかったけど……あ、待ってよ!僕も食べるよ!」
いそいそと、焼き菓子を食べようとするシュリを見て、レイトも袋から1つ取り出した。
「「せーのっっ!」」
2人は同時に、焼き菓子にかぶりついた。
シュリは豪快に、レイトは怖かったのか、小さく一口食べた。
「…………うまいな!」
「うん、とってもおいしい!こんなの食べたことないよ!」
2人は邪魔されない湖で、甘いお菓子をお腹一杯になるまで食べ続けた。満腹になる事が初めてで、シュリとレイトは満たされる幸福感を知った。
「あの人明日も来るって言ってたね。」
「あぁ。」
草むらに寝ながらそう会話を交わし、星が出てきた夜空を見つめる。
シュリは、母親を思い出しながら、甘い香りがする袋をギュッと抱きしめた。