黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「私は雪香様の旦那様の命令を先に受けました。そして、それは雪香様に危害を加えるものは殺せというものだったので、それを実行します。」
「違うわ!私は何もされていない、よく見て。お願い、やめてちょうだい。」
白騎士が剣を持つ手に力を入れたのを感じ、シュリは隠し持ってた短剣を抜いて構えた。
「ほう……やはり武器を持っていたか。これで、おまえは雪香様をさらおうとしていたのが証明されたな。」
「………俺が迎え撃ったら、同時におまえは逃げるんだ。」
「そ、そんなことできないよ。恐いよ。」
「そうじゃないと、死ぬんだぞ!」
「っっ!」
シュリは目は白騎士を向いたまま、レイトに小声でそう言った。レイトは恐怖のあまり震えて、動けそうにないのはわかっていた。けれども、生きるためには逃げなければいけないのだ。
「相談は終わったか。では、少年たちよ、死んでもらう。」
「っっ!!」
シュリは身を屈めて、相手の1発を短剣で受けよう。そう思ってその場に踏みとどまった。
すると、目の前に黒くて艶々とした物が突如表れた。そして、白い布がふわりと舞った。
シュリは何が起こったのかわからず、呆然とした。
綺麗な白い布が、真っ赤に染まってく。
それが、雪香だと気づいた時には、彼女は草むらに倒れていた。
「雪香様っ!!どうしてっ!」
自分が白蓮の刻印である雪香を剣で刺してしまい、白騎士は動揺し、彼女に駆け寄った。
「雪香さん!嘘だ………。雪香さんーーー!」
後ろからは、大きな泣き声で叫ぶレイトの声が聞こえる。
シュリは、雪香の血が地面に広がっていき、彼女の顔がどんどん青くなっていくのを、見つめていた。
鼓動が早くなり、頭はガンガンして、喉がカラカラになっている。
それが怒りのせいだとわかった時、雪香と目が合った。
「ごめんなさい。…………逃げて、シュリ、レイト。私は、あなた達が大好きよ。」
声はほとんど聞こえなかった。
雪香は、そう言うと満足そうに笑顔のまま目を閉じた。
まだ、息は微かにある。
でも、もう助からないと言うのは、シュリにもわかった。
持っていた短剣を、力の限り強く握りしめ、シュリは白騎士を睨み、そのまま全力で走った。
その黒の目からは、大粒の涙が一粒こぼれ落ちていた。