黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
雪香が苦しみながら伝えたことの意味は、わからないものを多かった。
けれど、シュリはそれを一つ一つ頭の中に刻み込んだ。
この世界で、レイト以外で信頼できた唯一の存在。シュリは、雪香を母親のように見ていたのだと、今さらわかった。
そんな彼女が今は静に眠れるように、そして、自分を守ってくれた雪香を感謝を伝えるように、シュリは涙を一筋流しながら、目を瞑って祈りをささげた。
雪香の遺体は、湖の近くに埋めようと思っていた。お墓をつくり、毎日お祈りしようと、2人は考えていたのだ。けれど、2人がやっと泣き止む頃に、また白騎士特有の音が聞こえてきたのだ。それも複数人分だった。
なかなか帰ってこない仲間と雪香を探しに来たのは明確だったので、雪香に助けてもらった命だ。
見つからないように必死に逃げた。
隠れ部屋に着いてからも2人は無言だった。
レイトは雪香の血が付いた服を見つめて泣いていた。シュリは泣きはしなかったものの後悔が大きかった。
そして、彼女のことを思い出しては何を思って自分達に会いに来たいのか。本人は、「自分の子どものように思っていた。」と、言っていた。それもあるだろうが、違う理由を考えていた。
しかし、小さな子どもにはむずかしく彼女の考えを知ることは出来なかったのだった。
けれど、次にやることは決まっていた。
「レイト、俺は白蓮の図書館に行く。」
雪香が死んだ次の日。シュリは、部屋の隅で落ち込んでいるレイトに、そう言った。