黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「シュリ、僕には出来ないよ。白騎士になんて、なれるはずがない。」
「じゃあ、ここにずっと暮らすのか?おまえ、白蓮になりたいんだろ?」
「それはそうだけど……。」
「それに、雪香さんが教えてくれたこと。無駄にするのか?」
「そんなことない!」
「白騎士になってもらえれば、少し隙をつくれる。スパイがいるのだから、俺も仕事がしやすくなるだろ?これは、白蓮に仲間が欲しいと思って作った作戦なんだ。信頼できるのは、おまえしかいないだろ。」
「けど………。」
レイトには、ずっと考えていた事があった。
もしも、奇跡的に異世界から来た人を捕まえて、刻印の交換が出来ることになったとして。
レイトとシュリの願いは、「白蓮と黒の刻印の交換だ。」自分達の交換だけではなく、この世界のすべての白蓮と黒の刻印の人々だ。
そうなると、レイトは白蓮になることが出来る。
しかし、シュリはどうだろう。
彼は、白蓮の刻印を持っているのだ。そうなると、彼は黒の刻印になってしまい、ずっとこのスラムに住むことになるのだ。
それでいいのだろうか?
彼はどうして、それを受け入れようとしているのか、理解できなかった。
レイトが何を言いたいのか。
シュリはすぐにわかったようで、少し困ったように笑い、レイトの頭をポンポンと優しく触れた。
「俺はいいんだ。白蓮の暮らし方は嫌いなんだ。自分の好きなことをしていたいし。だから、おまえが白蓮になってくれると、俺も助かる。」
シュリは「お願いだ。」と、レイトに言った。
レイトは、シュリが何よりも大切で、そして、守ってくれる人だった。
けれど、今は彼からお願いされる立場になっていた。そして、仲間として違う場所で頑張ろうと決めてくれたのだ。
弱虫の自分を信じてくれるのが、レイトは嬉しかった。
「わかった。僕、やるよ。白蓮になりすまして、白騎士にもなる。」
レイトはそう、強い言葉で決心をシュリに伝えた。真っ直ぐで強い視線は、いつも迷ってシュリの後を追いかけるレイトと全く違うものになっていた。
それを見て、シュリも同じく真剣な瞳で彼を見つめて頷いた。