黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「そんなに昔からの仲間なら、話せばわかってくれるんじゃないかな。」
「あいつ、俺に剣を向けていただろ?あんな事をするやつじゃなかった。それに、あの短剣を……俺は、あいつに投げたんだ。」
「…………もしかして。」
「あぁ、あいつ。雪香さんを殺した白騎士を、俺が殺した時の短剣なんだ。初めて人を殺した思いとか、それに雪香さんを忘れないために、ずっと持っていた。それなのに。あんなに大切にしていたのに投げつけたんだ。レイトに……。」
「シュリ………。」
「俺はまだ、迷ってるんだ。レイトを裏切ってまで、刻印の交換をやめていいのか。そんな風に。俺じゃなくても、いつか誰かがこの世界を変えてくれるんじゃないかって。俺が黒の刻印になって我慢すれば………。」
シュリは、迷い苦しんでいる。それが水音に伝わってきた。
彼を助けてあげたい。彼の力になってあげたい。
「シュリ。かっこよくないっ!」
「えっ………。」
水音の言葉を聞いて、シュリは思わず顔を上げて水音を見つめた。驚きのあまり、黒の目は大きく開いている。
「そんなクヨクヨしているシュリは、私の好きなシュリじゃないわ。」
「………。」
「私が手伝う。私も、この刻印の交換は意味がないって思ってた。苦しむ人が変わるだけで、憎しみは増えていくだけだよ。」
「………殺し屋の俺でもいいのか。俺は、沢山の血を浴びてきた。おまえに触れる資格なんかないかもしれないんだ。」
「この世界を変えていく事で、お詫びをしよう。死んでしまった人は、もう助けられないから。甦った時に、幸せな世界になっているように。」
「あぁ……。そうだな。そうだよな。」
少しずつ表情にいつもの明るさが戻ってきてシュリをみて、水音は安心して微笑む。
「それに………。私は、シュリに触れてほしいよ。温かくて優しい、シュリに。」
「………水音。」
優しく名前を呼ばれ、水音は幸せを感じてしまい、目を細めると何故か涙がこぼれた。
嬉し泣きとか、幸せすぎて泣けるというのは、本当なんだな、と感じてしまい更に気持ちが高まった。
「本当にこんな俺を受け入れてくれるんだな。」
「今日のシュリは、シュリらしくないね。」
「……なんでだ?」
「そこは、「俺を受け入れろ。」って、普段だったら言いそうだわ。」
「確かに、そうだな。でも………。」
水音の隣で横になっていたシュリは、大切な物を触るように優しく髪や輪郭を指でなぞった。
そのくすぐったいような、痺れるような感覚に水音は身をよじると、シュリは愛しそうに水音を見つめながら微笑んだ。
「今日は、お前を甘やかしたいんだ。」
「シュリ……。」
「水音、俺に甘えろよ。」
そう言って水音の唇に落としたキスは、今までのどのキスよりも甘くて、深いものだった。