黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛



 「聞いて欲しいことがあるの。私、刻印の交換を止めようと思う。」
 「………何を言っているんだい?水音、冗談は………。」
 「冗談じゃないよ、レイト。」


 水音が真剣な表情を見せてそう言うと、レイトの顔から微笑みが消えた。


 「どういう事?水音、話してくれないか?」
 「レイト。雪香、私のお母さんが話していた、元の世界の話、覚えてる?この世界は誰かの犠牲の上で白蓮や青草が幸せに暮らしているの。それは、とても悲しいことだわ。元の世界が完璧なルールがあって、みんな幸せだとは言えないけど。けどね、生まれた瞬間に運命が決まっていて、それが変えられないのはおかしいと思うの。レイトだって、そうは思わない?」
 「…………僕は、自分が黒の刻印のままでも、今よの白蓮のやつらに同じ思いをさせたいと思ってるよ。俺の苦しみ、そして、雪香さんの痛みを味わって貰わないと、僕は幸せにはなれないんだよ。」


 レイトは、怒るわけでもなく、ただ昔を思い出して、苦痛を感じている。そんな表情だった。
 そんな彼を見ていられない。水音はそう思って顔を背けようとした。けれども、逃げてしまえばまた、同じことが起こる。
 それに、もう水音の体には刻印が刻まれている。
 後戻りなんて出来ない。
 シュリとふたりで決めたのだから。


 「レイト………私、もうあなたと刻印の交換をすることが出来ないの。」
 「な…………。何を……。」

 
 水音は自分のブラウスのボタンを外し、胸元を彼に見せるように自分で服を開ける。
 

 「もう、白蓮の刻印があるから。」
 「っっ……シュリか………。」


 水音の肌にある刻印を見て、レイトは体を硬直させ白い白蓮の刻印を呆然と見つめていた。
 恐る恐る水音の刻印に指を当てる。彼の冷たい手が刻印に触れ、水音は体をビクっとさせるが、彼の動揺する姿を見てしまうと、それを我慢し彼がわかってくれるまで、説得を続けようとした。


 「私たちは、全ての人々を青草にして平等にしようと思っている。みんな白蓮になれても、働く人がいないと生きてはいけないの。だから、みんなが働いてみんなで支え合う世界にしようって思ってる。お母さんが話してた、そんな世界にしたいって。」
 「……じゃ……ぉ…。」
 「レイト?」


 レイトは、水音の話を聞いた後、ブツブツと何か独り言を言っていた。それを聞き取りたくて、彼に近づこうとした瞬間。



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