黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
「レイト。やめて……。」
「水音……そんな怖いことは止めよう。君が怪我をしてしまう。」
レイトは、小さく両手を上げて、水音の体から離れた。戦ったことのない女が小さな剣を持っていてもなんにもならないだろう。
レイトは腰に大きな剣をさしていたので、本気になれば敵わないのはわかっていた。
この後は、どうしよう。
そう思ったときだった。
「水音っ!!」
「シュリっっ!」
森の奥から、真っ黒な体が見え、大好きな人の声が聞こえた。その方向を見て、名前を叫んだが、それは悲鳴のようになってしまっていた。
彼の体からは血が出ており、立っているのがやっとの状態だったのだ。
近くにはエニシの姿がない。
彼を倒して来てくれたのだろうが、もう彼は戦うどころが動くのもやっとの状態だった。
水音が彼のところへ駆け寄ろうとすると、その前にレイトが剣を構えて立ちはだかった。
「シュリ。僕を裏切るから、そんな不様な姿になるんだ。」
「うるせーな。俺は俺の考えで動くだけだ。」
「……それが僕を独りにさせてもか。」
「俺はそんなつもりはない。新しい世界でおまえと………。」
「うるさいっ!!」
レイトは、今までで一番素早い動きでシュリに斬りかかった。
けれども、早さならシュリが勝っている。
シュリは大きく弧を描くようにジャンプすると、水音の傍に着地した。
そして、水音の前に立った瞬間。
シュリは1度水音を抱き締めた後、水音の体を軽く押した。
水音は思ってもいない彼の行動に驚き、そして、そのまま湖に体を投げ出された。
抱き締められた瞬間。
シュリは、「愛してる、水音。」と耳元で優しく囁いた。
水音が湖に身が沈む前に見たのは、レイトがシュリを剣で斬り彼が倒れる瞬間だった。
涙と叫び声は、湖の中に消え、水音はまた吸い込まれるように水の中に流されていった。