虚愛コレクション
「うーーん?どうだろ?よく、分からないなぁ」
千代はそう答えた。
「神楽にね、聞いたことあるんだけど“別にぃ”って言うだけなんだよね」
不思議だよねとでも言いたげな声色で言い、視線を真っ直ぐ向けた。私もまた真っ直ぐ向けて足をしっかり動かした。
「もしかしたら、人と接するの好きだからかかなぁ?あと、アクティブだし」
「アクティブ?」
「うん。夏休みは大体家に居ないよ?あ、帰って来ない訳じゃなくて、朝私が起きたら既に居なくて、夕方帰ってくるんだけどね」
「へぇ」
私には真似出来ない。それでなくとも、この暑さだ。行動する気も半減するというもの。 夕方の今でも堪える。
「あっ、じゃあここで」
いつの間にか別れ道迄来ていたようで千代が軽く手を上げて振る。私も反射的に同じようにして、「また学校で」と別れの言葉を口にした。
去り行く背中を見つめて、消えてしまうまで見つめて、溜め息を吐いた。
どうやら動く力が残っていないらしい。アスファルトの冷めきらない熱気が身を蒸していた。