虚愛コレクション
「何で西くん?って言うか、一時間近く神楽くんもいたの?」
つい、早口に吐き出してしまい、自分でも動揺しているのは明らかだった。ハッとしても、もう遅い。
コクリと頷きが一つ成され、肯定を示される。
「確かに一時間近くいたかな。何か、祈ちゃんが気になってさぁ?それこそ、西くんの話聞いたんじゃないかって気になって」
笑顔を崩さずにいる神楽くん。でも、一瞬だけ笑みを消した。
それは一番最初に神楽君と会った時の表情を思い起こすものだった。あれは見間違いだと思っていたけれど、違ったのだ。
「居場所、なくなったなぁって思ったりした?」
この冷めた目だ。彼の無表情より更に冷たい視線。そういう表情を神楽君は持ち合わせていたのだ。
だが、それも笑みによって隠された。
「何言って……」
「よぉーっく見てると分かんよ。人って単純だろ?例えば、祈ちゃんなら気に入らない事があるとほんの少し、片頬が引き吊ったり。後……」
『話の輪に入らないで適当に聞き流したり、でもって反論したり』
続く言葉はそんな事で、 私には無自覚の事だった。
けれど、自覚しようと思えば容易に出来てしまう辺り、神楽くんは彼の言うようによく見てる。彼以上に。
いや、彼だって私の事を分かりやすい人間だと言って いたから、彼もまた洞察に優れているのだろう。
それでも、
「慰めてあげようか?慰めてくれるなら」
神楽くんは別格かもしれない。