虚愛コレクション


それはとても彼らしい感覚に思えた。私だって人の話を聞いている時はそうかもしれなかった。

そして同時に私にとっても、私の話が創造物であればいいかとどんなに思ったか。

またページを捲る音が聞こえた。彼が息を吸う音が聞こえる。


「でも、本当の事だってわかるよ」

「え……」

「何」

「いえ、透佳さんがそんな事言うなんて思わなくてビックリしちゃいました」


たった今創造物のように思うなんて言っていたばかりなのに。もしかして私の気持ちを汲み取ってくれたのだろうか。と、都合のいいように自己解釈をする。

誰かに相談したかった。でも相談できなかった。

どうして彼には言えてしまうのだろうか。大事に思っている筈の友達にすら相談できていないのに。いつか、もっともっと唯一無二の友達くらいになってからなら相談できるかな、なんて思っているくらいなのに。

彼が恋人以上、友達以下と言うアンバランスな存在だからだろうか。嫌われてもいいなんてことは思っていない。嫌いになるとか、嫌いにならないとかそういうもので片づけられない歪な関係だからだろうか。

分からないけれど、それでもきっと彼は特別。



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