虚愛コレクション
冷たい意識に雑念を沈めて、肩に掛かった髪を払った。今はそんな事を考えても意味がない。
ほどいたリボンを結び直した。まあ上手く結べた方だろう。
「あっ、ねえ。今日は暇?」
プレゼントを鞄の中に大切にしまったタイミングで問われる。
今日。放課後か。鞄のチャックを閉めながら頭の中で考えた。だが考えるまでもなく既に頭の片隅に答えは用意されていた。
「あー……今日はちょっと、用事があるんだよね……」
「そっかぁ……」
残念そうな声色に罪悪感を覚える。先約は守るべきである筈だから仕方無いことなのだが。
気がつけば、目の前にある大きな瞳に、猫のような印象を持つ眼を無意識に重ねていた。
同じ、“私”に向けられているのに全然違う。片方は酷く冷たい。
ああ、でも、比べる事ではないのだった。
「何かあった?どうかした?」
「ううん。違うの。祈に会うの久しぶりだから放課後遊ぼっかなぁって。用事なら仕方ないよねっ」
じゃあ、また別の日にね。なんて言って、私に気にするなと諭してくる。
「うん、ごめんね」
やはり先約でもこの用事は最優先では無いような気がして、心が痛んだ。痛みながらも、振られた他愛のない話に乗っかる。
例え揺れても、それでも……。