虚愛コレクション
もしもの話を考えたことがある。もしも両親が浮気していなくて、私だけに愛情を向けてくれていたら、と。
愛されたい。私だけを見てほしい。そんな考えなんて生まれなかったのだろうか。
友達でさえ独占したいと思うのは、浮気をしている二人が原因なのだろうか。
「あのね、この間の休みに西君と遊園地に行ってきたんだけどね――」
ここ最近千代の話は半分くらいしか頭に入ってこない。
いいな、羨ましいな。千代に好かれて。誰かに好かれて。好きな人とデート出来て。幸せいっぱいに心から笑えて。
そんな感情が頭を占める。
好かれていると言うことが羨ましくて仕方がない。
勿論、私が恋愛感情を千代に持っているわけではないのだが。
携帯についているその可愛らしいキャラクターのストラップはその時買ったものなのかな、なんて考えていた。
「祈、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。続けて」
時折聞いているかと聞かれるのだが毎回答えは決まっている。殆んど聞いていないけど聞いている振り。
ああ、もう。こんな自分は嫌だ。羨ましいよりも友達の話をちゃんと聞いていたいのに聞くことが出来ない。
思わず歯を食い縛った。
「……ねえ、祈。」
ふと声が少し変化した。明るい声が一つ下がった。