虚愛コレクション
それでも用事を取って赴いてしまうのは、私が馬鹿だからか。
いいや、間違いなく彼に惹かれているから。最優先ではないような気がしても、だ。
学校からは離れた街中にて、姿を発見する。行き交う人の雑踏に紛れているのに浮いたような雰囲気を醸し出している。言うなれば近寄り難い。
しかし、誰もそんな彼を気にも留めないだろう。だって皆、自分の事で忙しい。
私は躊躇わずに近寄り、顔を覗き込むように声を掛けた。
「こんにちは。透佳さん」
「ん。こんにちは」
突然現れても驚くでもなく、挨拶を返された。
彼と会うのは私の誕生日以来二度目だ。あの日一度きりと言う訳にはならないように、連絡先を交換したのだ。
今日呼んだのは私。
そう、だから約束をドタキャンするわけにはいかなかった。と、彼にとっては、どうでもいいであろう理由を付けて振りかざせば、後ろ髪を掴んでいた手は消えた。
「何の用?」
「用がなければ呼んではいけませんか?」
「別に。俺も忙しいんだけど、って話」
何となく、イライラしている感じ。けれど、嫌なら来なければいいだけの話だ。