虚愛コレクション
観念した。とでも言うような口ぶりでつぶやいて、次の瞬間には貸しの内容を話してくれた。
「祈の誕生日にあげた、ショップ限定のキーホルダーはね、神楽に無理言って頼んだの」
と言われても、驚かないのは神楽君だからだろう。
「ほら、神楽いろんな人と知り合いでしょ?祈があのキーホルダー欲しがってたのは知ってたから試しに相談してみたの。そしたら、そのショップの人と知り合いでね、平日に最終の再販した時に、絶対だめだけど取り置きしてもらったっていうか……」
そこまで言っておきながら、最後はしどろもどろになる。
確かに喉から手が出るほど欲しかった。私が買いに行って速攻売り切れたそのあとに、再販していたのも知っていた。でも平日だからと諦めたのだ。
どうやって入手したのかと思っていたがなるほどそういう事か。
それは間違いなく内緒にしておかなければいけない事だ。だから私もそれは内緒にしておこう。
「ありがと、千代。すごく嬉しい」
これ以上は何も問いかけてはいけない。だから代わりに再びお礼を言えば、頬を緩ませた表情が返ってきた。
「えへへ。祈は、高校に入って初めてできた友達で、大好きだから絶対喜んで欲しかったんだぁ」
そんなストレートな言葉が何よりも一番嬉しいだなんて、きっと思いもよらないのだろう。
「あっ!ごめんね!気持ち悪いこと言っちゃった」
「そんな事ないよ」
私が笑った裏側に、抑えきれない喜びがあった事なんてきっと知らないのだろう。
ああでも、もう遅すぎた。