虚愛コレクション
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「やっ……と見つけた……!」
「あはっ……神楽君も飽きないね」
波の音が耳に届く。
防波堤に伸ばした足元に目を向ければ、テトラポットに波がぶつかって弾けた。
隣に神楽君が座ったのが分かったけれど、目を向けないまま足を体に引き寄せて三角座りをする。
言葉を吐き出そうとして、何度か口を動かすけれど、声にならない。
そんな情けない私を誤魔化すように髪を何度か撫でて、一音ずつ零していく。
「――……神楽君の事は私が振ったって事で終わりにするね」
「……そう」
「何だかんだ楽しかったよ。恋人ごっこ」
「嘘ばっかり」
「ふふっ……」
神楽君は責めてすらいないせいだろうか。見抜かれて思わず笑ってしまう。
ふわり、と風が吹いて潮の匂いが鼻腔をくすぐる。
「……ちゃんと、透佳さんとはお別れしたよ。私、振られちゃった。なんて」
「そっか」
わざとふざけて見せた。
不思議と心は痛まない。それこそ嘘みたいな話だけれど、あの妙な不安感が薄れていたのだ。