虚愛コレクション
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「あーあ、降られた」
玄関口での一人言に返ってくる言葉など当然ない。
梅雨だから常備するのが当たり前なのだが、傘を持ってくればよかったと当たり前をしなかったことに後悔。
千代がいれば傘に入れてもらえたかもしれないけど、先に帰ってもらった為にそれも望めない。こんな日に図書室なんかに寄るじゃなかった、とまた後悔を重ねる。
溜め息を吐きながら、さて、どうしよう。と、止みそうにない雨を見つめて考える。
どんより雲に、降りしきる無数の水滴。地面に落ちては弾ける。オマケに湿気が高いようでじっとりと肌に触れる空気が不快だ。
「……でも、雨とか好きそうだなぁ」
不意について出たのがそんな事。浮かべたのは彼の姿。
彼はどうやら忙しいらしく、電話等を掛けると二割増し程そっけないので、何となく避けていたのだが今はどうだろうか。何をしているのだろうか。
画面を暫し見つめてから、撫でるように触れてメモリー内を行ったり来たり。
また少しの間画面を見つめた後、漸く意を決する。自分の家より、彼の家の方が近いが為に、雨宿りさせてもらおうと彼に電話を掛けたのだ。
今日くらいは良いだろう。そうじゃなきゃ、少し困る。
耳に届く呼び出し音が雨音に入り交じっていた。