虚愛コレクション
バシャバシャと水溜まりを弾く音。ザーザーと雨が降る音。それらを聞きながら、ただただ走っていた。まだ数分程しか経っていない筈なのに、制服も髪もびしょ濡れだ。
こんなんじゃ、雨宿りも何もない。急に雨足が強くなるなんて、聞いてない。予想もできない。
顔にかかり続ける水を拭いながらも必死になる他ない。冷たい、やっぱり不快だ。
「もう……っ!さいっあく……っう、きゃっ!?」
苛立ち混じりに雨への不満をぶつけた時、それが返ってきたかのように、足元を掬われ、滑った。水溜まりが弾ける。
「いっ……た」
前へ倒れるも両膝が地につくのみだったが、擦りむくには十分だ。出来上がった傷口に雨が攻撃を仕掛けてきてジクジクと痛む。
ついてない。もうため息をつくこと以外出来そうもない。
ここまで濡れてしまえば同じかと、急に投げやりな気持ちになり、後少しの距離は歩いて行こうと立ち上がろうとした、時。
「……?」
急に雨が止んだ。同時にリンと一つ、鈴の音が聴こえた。