彼が隣にいる理由
グラスを持つ姿1つにも、目を奪われ、文香さんから目が離せない。


「美味しいです」


自然な笑顔を浮かべた文香さんに、どうしようもなく愛しさが溢れた。

何か話さなければ、このグラスを飲み干したら、帰ってしまう。

そんな変な焦りから、必死に文香さんに話掛け続けた。

そんな俺に付き合って、文香さんはラストまでお店に居てくれた。


「ごめんなさい。長居して」

「いえ」


まだ、一緒にいたい。

でもこれ以上文香さんのことを引き止める術を、俺は知らない。


「お会計を」

「今日は俺の奢りです。約束したじゃないですか」


でも・・・。と少し申し訳なさそうに困る文香さんは、どうしても奢られるのが嫌なようで、お金を無理矢理渡してきた。

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