彼が隣にいる理由
何も答えなくなった文香さんに痺れを切らしたのは、俺の方で・・・


「とりあえず、お友達からで」


文香さんに手を伸ばし、握手を求める。

そんな無茶苦茶な俺の提案に、文香さんは困りながらも乗ってくれた。

俺の仕事のせいで、文香さんとはすれ違いで日々。

だから、文香さんとの距離も縮められない。

そんな俺は押し掛けるように、文香さんの部屋に入り浸るようになった。

始めのうちは、待ち伏せするように文香さんの部屋の前で待っていた。

だがそんな俺を可哀想に思い、文香さんは俺に部屋の鍵を預けてくれた。

鍵を渡された時、俺がどれだけ嬉しかったか、文香さんには一生わからないだろう。

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