彼が隣にいる理由
そんな愛子の言葉もロクに耳に入らないくらい、目の前に現れた意外な人物に視線は釘付けになる。


「おせぇよ」

「元々来る気なかったのに、朝まで店に居座られた挙句、拉致られた俺の身にもなれよ」

「細かい事は気にするなよ、咲大」


咲大と呼ばれる男が、彼にそっくり過ぎて、中々頭が付いていかない。

ボーっとしていると、いつの間にか愛子は彼氏の方に行ってしまい、1人取り残されていた。


「文香ちゃんだったよね?」

「え?」


突然声を掛けられ、驚きながらも声のした方へと視線を向けた。


「俺、佑樹(ゆうき)」

「はぁ」


間抜けな声が、口から零れる。


「文香ちゃん、歯科クリニックで働いてるでしょ?」

「・・・うん」

「俺、仕事で行ったことあるんだ」


佑樹くんの顔をちゃんと確認すると、確かに見たことはある。

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