彼が隣にいる理由
「佑樹、良い奴だよ」


佑樹くん?


「そうだね。面白い人だと思うよ」

「・・・うん。でも、ダメだよ」


そう言うと、彼はあたしのことを引き寄せる。


「文香さんは、俺のだから。祐樹には譲れない」


この人は、あたしの心を乱す天才だ。

彼は息をするように、女の心を繋ぎ止めるような言葉を吐く。

過去に、どれだけの女を狂わせてきたことだろう。


「俺のこと、捨てないでよ」


簡単に彼を切り離すことが出来たら、どんなに良いだろう。

でも現にそれが出来ないから、1年もの間、彼が作り出した幻の時間を彷徨っているのだ。

決して、未来には繋がることのない時間の渦の中で・・・

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