彼が隣にいる理由
「これからについての、話がしたいんだけど」


改まったように言う文香さんに、俺は最悪の状況を想像してしまう。


「捨てるの?俺のこと」


困ったように動揺する文香さんに、俺はどうしようもなく不安に駆られる。

もう会えなくなるなんて、考えたくない。

そんな未来なんて、イラナイ。

俺が欲しいのは、文香さんと一緒に過ごす未来だ。

それだけは、どうしても譲れない。


「あたし、ね?真剣に結婚を考えようと思うの」


その結婚の相手は、俺じゃダメなの?


「だから?」


自分でも、驚くくらい低い声が出た。


「だから、その・・・」


そこまで言って置いて、文香さんはその続きを言わない。

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