彼が隣にいる理由
バカにされて悔しいのか、嫌悪感丸出しな幼稚な男になんか構っていられないと思い、男を置き去りにして席へと戻る。


「遅かったね」


他の子たちに聞こえないように、愛子が言う。


「調子乗ってるガキを遇らうのに、少し時間が掛かった」

「ガキって」


隠そうとしているが、隠し切れないのか、愛子は楽しそうに笑みを零す。


「文香、抜ける?」

「そろそろ良い?」


時間を確認すると、良い頃合いだった。


「ごめんね、付き合わせて」

「明日のお昼、楽しみにしとく」

「はいよ。お疲れ」


自分の荷物に手を伸ばし、あたしは静かにその場を後にした。

無駄な時間を過ごしたが、愛子の頼みだし、明日のお昼も確保できたから良いか。

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