ふたりごと
1.はじまり
はじまりは突然だった。
だけど確かにはじまっていたんだ。
1.はじまり
『綾瀬さんおはよー!』
クラスメートの谷口さんが大きな声でそう言った。
『おはよう』
そっけなくそう言ってわたしは席に着いた。
…もう少し愛想よく言えばよかったかなぁ。
でもいまさらだよね。
入学式からの一週間を風邪で休んでいたわたしは、そのまま友達を作るきっかけをつかめないまま、気づいたらもう高校3年生になっていた。
もともと一人で居ることが苦にならないタイプだったし、まあいいか、とわたしは特に気にせずに過ごしていた。
谷口さんは3年のクラス変えで同じクラスになって以来、毎日挨拶をしてくれる。
学級委員長だからなのか性格なのか、たぶん一人でいるわたしを放っておけないんだと思う。
でもわたしは一人でいることが本当に嫌じゃないんだ。
むしろ気が楽なくらい。