ふたりごと
『いろいろなジャンルの本を読むけど、1番好きなのは ニイナと魔法のねこ っていう子ども向けのシリーズものなの。
高校生が読むような本じゃないけど、でも小さいころから読んでる大好きな本なの』
わたしは言いながら恥ずかしくなってきて、最後のほうはものすごく早口で言った。
そんなわたしの気持ちに気づいてか、彼はゆっくりと横に頭をふりこう言った。
『自分が好きなら、その気持ちを大事にすればいいんじゃないかな?』
彼の言葉は魔法のようだ。
確かにそうだ。
好きなものを否定する必要なんてないはずなのに、大人に近づくにつれて、いつのまにかわたしはそんな当たり前のことを忘れていたんだ。