雨宿り〜大きな傘を君に〜

しかしその答えは、意外なところから聞こえた。


「もしダメと言われたら、君は諦めるんだ」


「菱川先生…」


いつの間にかリビングの扉を背に、菱川先生が立っていた。


「退け」


驚きもせず緒方さんは面倒臭そうに菱川先生と向き合った。


「風邪引かないように、髪を乾かしてから寝てくださいね」


「うるせぇな」


待って。
2人きりにしないでと、緒方さんを心の中で止めたけれど、こちらを振り返ることもなくリビングを出て行ってしまった。

薄弱すぎます…。




「君も風邪引かないようにね」


そう言って私の隣りに座った菱川先生は、羽織っていたカーディガンを私にかけてくれた。


「随分と緒方さんには心を許しているようだけど?」


「そ、そんなことは…」


大げさに手を左右に振って否定すると、菱川先生は笑った。


寝起きのせいか少し気怠げな先生の表情にすら、見惚れてしまう。

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