雨宿り〜大きな傘を君に〜
タイミングよく来た電車に乗り込み、追求する。
「なんでもなさそうには見えませんでした」
「俺はハナちゃんの頰が気になるんだけど」
「そうやって誤魔化すことは止めてください」
空いている席に座った先生の前に立つ。
「誤魔化すもなにも佐渡先生に相談を持ちかけられて断っただけだよ」
「どんな相談ですか?」
「内容まで聞いてないよ」
疑いの目を向けながらつい前のめりになっていた私の顔に、先生の手が伸びて来た。
痛めた頰に触れる一歩手前で、その手は静止する。
「腫れているね」
「……転びました」
今度は私が追求される番だ。
「どこで?どうやって転んだの?」
「鈍臭いって笑われそうなので、黙秘します」
「笑わないから、教えて」
有明さんに叩かれたと伝えれば、きっと自分を責めるに違いない。だから今日だけは、私の嘘を見逃してください。