雨宿り〜大きな傘を君に〜

翌日になると赤みも取れて、昨日よりは随分とマシな状態になった。

それでもまだ目立つし、マスクをしても隠せない。

高校を休みたいと正直に言うと、菱川先生はいい顔をしなかったけれど緒方さんは「たまには良いんじゃねぇか」と許可してくれた。

もちろん塾を休むつもりはない。
高校の授業は塾で習ったことのおさらいだから問題ないけれど、塾を1日休むと遅れを取り戻すことが大変になる。きっと快く崎島はノートを貸してくれるだろうけれど、熱が出ているわけでもないのだからズル休みはいただけない。


緒方さんと菱川先生を見送り、いつもは時間がなくてできない布団を干した。

そして先延ばしにしていた読書をする。

【恋は雨音とともに】
私が先生に贈った本だ。


身分差、年の差と、障害の多い恋を乗り越えてやっと結ばれた矢先、2人は互いに距離を置くようになった。

10年という長い月日を費やし、2人の恋は燃え尽きてしまった。
結ばれるまではあなたを求めて無我夢中になり、結ばれた後は退屈だったーーと、ヒロインは語っている。

雨をきっかけに出逢った2人だったけれど、雨がいつか止むように、抱いた激情もまた消え失せる。
そんなストーリーに、私は少しも共感できなかった。


まるで永遠の愛を否定されているようで、やるせない気持ちになる。

菱川先生は物語のラストを読んで、どう思ったのだろう。もっと甘ったるい私好みの本を贈れば良かったな。


読み終わった報告をメールで送ろうと携帯を見ると、

崎島からのメールが入っていた。
1件の添付画像とともに。

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