雨宿り〜大きな傘を君に〜
お昼になると崎島は近くの公園のホットドッグを奢ってやると席を立った。
私も広げた参考書をそのままに外に出た。
冷たい風が吹き、崎島の金髪がなびく。
「大野ってさ、菱川が好きなの?」
「え?」
後ろ向きで歩きながら、真っ直ぐな目で崎島は聞いてきた。
「写真見て、動揺したろ」
「なんで私が動揺したって分かるのよ。別にしてないし」
「この間俺たちが出掛けた時、菱川と鉢合わせして、大野が落ち込んでるように見えた」
「そう?」
周りをよく観察して空気を読む男だけあって、鋭い。
「俺には菱川のどこがいいか分からないけど、相手は一回りも年上だぞ。やめとけよ」
一回り?
ああ、そうだよね。
先週に先生は誕生日を迎えて26歳になったんだ。
現時点での私と先生の年の差は、10歳。
絶対に埋めることができない数だ。
「はいはい、分かりました」
ムキになって否定すると怪しまれるため、適当にあしらう。
年の差なんて、私は気にしない。
そう胸を張れたら良いけれど。
写真の中の2人があまりにお似合いで、大人の女性には敵わないと思った。