雨宿り〜大きな傘を君に〜
ボールを追いかけ回したせいで、図書館の中が暑いと感じるくらいに身体が温まっていた。
「崎島ってなんでも出来るんだね」
華麗なボール捌きには驚いた。サッカー部に入っているのでは無いかと思うくらいに上手だったけれど、野球派らしい。
「成績優秀、スポーツ万能が俺のトレードマークですから」
「本当のことだけあって、ムカつく」
謙遜をせずに受け止めるところも嫌味がなくて、好感が持てる。
「大野は少しドジなくらいが可愛いよ」
「可愛いって…顔を洗う時、すごいヒリヒリするんだよ。あ、今日は英語の小テストだよね」
「……そうだったな」
英語の参考書を開く。
「私、こういうの憧れだったの」
「ん?」
「友達と一緒に勉強すること、ずっと憧れてた。崎島のおかげで叶えられたよ」
「大袈裟な」
「大袈裟でもいいの。ありがとうね」
「…いつでも付き合ってやるよ」
友達ができた。
好きな人ができた。
私にとっては奇跡みたいなことだ。